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思考 感覚

生命の入口

空気があるのは当たり前。鼻から息を吸うのは当たり前。口から息を吐くのは当たり前。息をすることで生き長らえ、息を止めれば死ぬことも知っている。

生まれてから絶えず休まず繰り返す生命活動であり、当たり前すぎて、見えない、聞こえない、感じない無意識の生理機能にはたと気づき、息をすることが人生で一番楽しいと達観した人たちがいる。ヨガの達人や音楽家、水泳選手、医者たちである。

浅く短く胸で吸う肺呼吸では、人を動かすほどのエネルギーを吐き出せない。横隔膜を深く下げる腹式呼吸なら、政治家のような自信に満ち溢れ、歌手のような響き渡る大きなエネルギーで、人に感動や喜びを与えることができる。

子供の頃、洗面台に栓をして水を溜め、その水に顔をつけて何秒間息を止められるか競い合ったものだろう。潜水競技に限らず、スポーツは酸素を効率的に使うことが、勝敗の決め手になる。

呼吸の質を注意深く観察するだけで、洞察力、思考力、生命力をレベルアップできるという、密教の秘技を手に入れられるのだ。