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思考

始めに言葉ありき

一人なら対話は生まれない。真似る相手がいるから対話が始まる。イブにアダムがいたように、イザナミにはイザナギがいて、一人がアと言えば、もう一人がウンと返す。阿吽の呼吸から対話が始まる。言葉は音節をつなぎ合わせるものなので、前後という時間の概念を本質的に持つ。そして、時間の始まりが、未来への不安と、過去の後悔と、現在の苦悩の始まりでもある。

言葉に幅を持たせるほど時間軸は伸び、二人の苦悩は罪深くなっていったであろう。そして言葉は二人の間で定義され、知識になる。

同じ雲を見ても、知識のない獣は気づかないが、知識のある人は気づく。同じ風を聞いても、知識のない子供は気づかないが、知識のある大人は気づく。同じ石を見ても、愚者は気づかないが、賢者は気づく。

知識がなければ、景色を見ていても、ものが見えていないが、ものを区別する知識が増えるほど、景色からものを取り出して加工することができるようになる。